開業当初は、どのように営業をすれば良いか?
過去に社労士英知の夜会で「最初はどのように営業をすれば良いか?」という質問がありましたので、このテーマで記事を書いてみたいと思います。
見込み客に知られなければ、何もはじまらない
営業開始にあたり、事務所を借り、備品を揃えているうちに資金が不足してきたので、糊口をしのぐためにアルバイト。では、事業が軌道に乗るまでに時間がかかってしまうか、アルバイトの収入がメインになってしまいます。また、いくら素晴らしい知識や技術を持っていても、ユーザーに知ってもらわなければ、いつまでたっても仕事の声はかかりません。
ですので、「どのように営業をすれば良いか?」という問いに対して、最初にすることは「自分の五体を使って、いろいろなところに出かける」「いろいろな人に連絡を取る」という、人とコンタクトをする行動の量に徹することに限ります。
独立直後は、開業に向けて貯めた軍資金や、退職金があるかもしれません。しかし、待っているだけだと、あっという間に預金残高が少なくなっていきますし、請求書は恨めしいほど正確かつ定期的に送られてくるものです。
実は、「外にでるのはもう少し、実力と付けてから」なんて言っている余裕は意外とありません。
「完璧でも”何もしない”」<「及第点&”やってみる”」
「外に出かけよう」と言っても、名刺が無い。パンフがない。サービスが完成していない。と仰ると思います。
しかし、そもそも実績がないのですから、書斎でアイディアを考えても、本当にお客さんが求めているサービスなんて出てきません。
得意分野やキャッチコピーは活動とともに固まっていくものですので、名刺はWordで作ったものでOKですし(専門家としての最小限の品質は必要です。)、実績がないのだからパンフレットなど不要です。サービスを考えてからと仰るかもしれませんが、サービスの完成は何か月先なのでしょうか?サービスは納品しながら磨いていくものです。
自信が無い。実績がない。という負い目から目をそらすために、いろいろ理由を付けて、行動に移さない判断をしがちですが、動かないと何もはじまりません。筋トレも最初の一週間が筋肉痛でつらいのと同じように、営業活動も慣れるまでの最初の一週間が大変なのです。
「いつかマッチョになってやる」と言っていてもマッチョにならないのと同じで、「いつか売れるようになってやる」と言っていても売れないのです。
独立前の社内では、人事労務については第一人者だったかもしれませんが、外の世界では自分が思っているより、世間はあなたに興味なんてありません。失敗したところで「あの人誰だっけ?」で終わってしまいます。まずは「世間は自分に興味が無い」ことを認識するところから始めましょう。
ポジティブに考えるなら、忘れられるより「名刺が手作りで野暮な、独立したての人」と覚えてもらった方がはるかにマシです。名刺やホームページに費用を掛けるなら、歩きやすい靴を一足買って履き潰していくのが王道になります。
避けるべき行動
①新人なので、右も左も分かりません
新人の方の中には「新人なので右も左も分かりませんが、一所懸命頑張りますので、よろしくお願いします」と仰る方がいます。
しかし、考えてみてください。仮に自分が盲腸の手術を受けるとき、麻酔の直前に執刀医から「新人なので右も左も分かりませんが、一所懸命頑張りますので、よろしくお願いします。」と言われたら、あなたは、どんな気持ちになるのでしょう?
プロである以上、新人もベテランも関係ありません。はじめての仕事であっても、「大丈夫。私が担当しますので安心してください。」と言っもらえるドクターの方が安心して手術を任せることができるでしょう。
もちろん、独立直後は経験がありませんので「安心してください。」と言い切ることは相当なプレッシャーになるとは思います。
しかし、専門家として独立した以上、今後も知らない処理や、難しい相談と永遠に格闘する人生が待っています。
「新人なので右も左も分かりません」は「ダメだったけど、新人だったので仕方ないよね。最初に言ったじゃない」と、自分に言い聞かせる逃げ口上でしかありませんし、報酬を払っている依頼人は、そんな言い訳するならちゃんとやって!と言うはずです。未知の難問と向き合い解決することから目をそらすならば、この世界で生きていくことは残念ながら難しいと思います。
②ワンストップサービス→ダブルライセンス
「社労士の次は、行政書士かFPのどちらを取ればいいでしょうか?」という相談も受けることがあります。
回答は「資格の勉強をする時間があるなら、その時間で外に出た方が良い。どうしても資格が取りたいなら、求人難の業界で、喰いっぱぐれない大型免許や二種免許を取った方が良い。」になります。
もちろん資格がキャリアにとって有効となる場合もありますが、独立直後という状況を考えると、これも自分に自信が無い現れであり、断られたり、相手にされない恐怖からの逃げの発想です。資格の数がたくさんあっても、お客さんは集まらないものです。自分が採用をする側だったときを思い出してください。資格の数で内定を出したことなんてないはずです。
違う切り口で考えると、総花的な街の中華料理店より、味噌ラーメン一種類で勝負している専門店の方が分かりやすいし、店に入ってみたいと思うのと同じです。手広く資格があるとチャンスが多くなるように見えますが、むしろ逆。何屋なのか分かりにくくなり、かえってお客さんを逃がすことになります。
日記を付けることの重要性
多くの方にご提案をしていることに「日記をつけること」があります。長文の日記をつける必要はなく毎日数行で構いません。日記をつけることは、専門家としてキャリアを歩む際に3つのメリットがあります。
①問題を整理するトレーニングになる
私たちの仕事は、依頼人をはじめ関係者に話を聞いたり、たくさんの情報を分析することが求められます。「日記は、何を伝えたいのかを考えるトレーニングになります。
②考えを表現するトレーニングになる
考えを簡潔に伝えることも、私たちに求められるスキルになります。読み手に伝わりやすい文章を書くことも技術ですので、何度も文章を書かなければ上手になってきません。
③将来、自分がピンチの時に助けてくれる
近い将来、ピンチが訪れたときに、過去に書いた日記を読み返してみると、「当時はこんなことで悩んでいたのか!」と自分の成長を実感することができるはずです。数行の日記を毎日つけることは、誰でもできるのですが、意外と多くの人がしないこと。です。途中でくじけても構いませんので「続けてみる」を意識してみましょう。
まとめ
「開業当初は、どのように営業をすれば良いか?」という問いに対しては、「どんどん外に出て自分の存在を知ってもらう。」が答えです。
自分が思っているほど、世間からは期待されていませんし、失敗したとしても覚えいるなんて期待してはいけません。むしろ、失敗でも覚えてくれた方が御の字なのです。
専門家の世界に飛び込んだ以上、人生をハードモードで生きていくことを決めたのですから「恥ずかしい」や「怖い」なんて言ってられません。
仮に、自由のないサラリーマンが嫌で飛ぼ出した。という方もいるかもしれませんが、自由には結果と責任がついてきます。もう、独立をしてしまったのですから、後戻りはできません。命までは取られないのですから、どんどん挑戦をしていきましょう。行動の量に比例して結果はついてきます。
投稿者プロフィール
- アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社等を経て、社会保険労務士法人アイプラスを創業。人事制度の構築から、労働問題の「具体的な対応策」を知りたい、経営者・人事担当者様向けの労働相談まで対応している。特定社会保険労務士
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